私を壊して そしてキスして
「アイツか?」
私は小さく首を振る。
「菜那?」
彼の鼓動がひどくうるさい。
「もう、ちゃんと終わりました。だから……心配しないで」
彼と会ったことはもう隠せない気がしてそう言うと、ゆっくり離された体。
次の瞬間、彼の唇が私のそれにそっと触れて――。
それから、そのままソファーに押し倒された。
私の上から見下ろす彼の瞳が、私を捉えて離さない。
私の左頬にゆっくり近づいてきた手が、そこを優しく撫でる。
「菜那、俺と始めよう。新しい恋を――」
「――うん」
もう一度交わした優しいキスは、私の涙と混ざり合っていった。