私を壊して そしてキスして
「ありがとう。菜那の淹れるコーヒーはいつも美味いよ」
パソコンの電源を落としながら、ふーっと息を吐いた彼は、コーヒーカップを持ったまま立ち上がって、ソファーに座った。
「菜那、人生はいくらでもやり直せるんだぞ?」
そんなことを突然言い出す彼の顔を見つめると、フッと笑う。
「俺も散々回り道してきた。
菜那のことだってそうだ。
ずっと見ているだけで、そのまま失うのかと思った。
だけど、どう転がるかわからないだろ?
今、菜那はここにいるんだから」
そうにっこり笑う彼に、私も心からほほ笑んだ。
彼は私に自信と勇気をくれる。
そして、少しずつ傷が癒されていく気がした。