私を壊して そしてキスして
私はもう一度受話器を手に取り、ボタンを押した。
「ただいま」
「お帰りなさい」
彼のパソコンを借りて転職の情報を調べていた私は、余りに没頭していて暗くなっているのに気がつかなかった。
「何してる?」
「お仕事を」
「そっか」
そういった彼が着替えに行くのを見送って、キッチンに立った。
下ごしらえはすんでいる。後は温めて。
今日は、中華。エビチリをメインに、青梗菜の炒め物と春雨スープと。
「んーいい匂い」
ラフなTシャツとジーンズ姿の彼は、もう見慣れたとはいえ初めて見たときは新鮮だった。
いつもスーツをきっちり着こなしている彼だけど、私服姿もかっこよくて、意外とがっちりしていることがよく分かる。
半袖からのぞく腕は筋肉質だった。