私を壊して そしてキスして

「あのさ、どういうことだよ?」


さっきの社員が帰ってきて、私に攻め寄る。


「どういうことと言われましても、私はそのような仕事をするつもりはありません」

「はぁ?」


ため息をつきたいのはこっちの方だ。


「君に何があるんだよ。
どうせ腰かけなんだろ? 

そこそこきれいな顔してるんだから、それで役に立てばいいだろ」



腰かけ……。
そんなつもり、少しもなかった。

けれど、靖司と結婚を考えたとき、退職を少しも迷わなかった私が、そうじゃないなんてとても言えなくて。



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