私を壊して そしてキスして

超えるべき山


その日は、気分が沈んだまま部屋に戻った。

まだ翔梧さんが帰っていなくて真っ暗なその部屋は、私の傷を広げてしまうようだ。


はぁ。

そんな風についたため息が、私の気持ちをますます塞ぎ込ませる。
こうなってしまうと、悪循環から抜け出せなくなる。


「ご飯、作ろ」


自分のテンションを高めるためにそうつぶやきながら、エプロンを締める。
だけど、鍋を取り出したところで、またため息が出てしまった。



私が今まで必死にやってきた"つもり"だったことは、まったく無駄だったのだろうか。

少なくとも翔梧さんは「よくやってくれた」なんて褒めてくれていたけれど、そんな優しい言葉に寄りかかっていただけなのかも……。



< 170 / 372 >

この作品をシェア

pagetop