私を壊して そしてキスして
「翔梧さん、あのっ……」
帰宅が遅くなることを告げたのは、その日の朝だった。
「遅くなるのか? それなら迎えに……」
「いえ。タクシーで帰りますから」
歓迎会があると嘘をついた私。
誰一人として、私のことなんて歓迎していないあの会社の実態を、彼に知られたくない。
「そうか。それじゃあ、気を付けて。
迎えがいるならいつでも電話しろ?」
「ありがとうございます」
彼の優しい言葉を聞いて、胸にチクンと痛みが走る。
それでも、今日を乗り切って、他の仕事もできるようになりたいから。
私は少し焦っていた。