私を壊して そしてキスして

定時の5時半で上がって、更衣室に向かう。

パンツスーツに着替えてやることがなくなると、途端に弱気の私が顔をのぞかせる。


思わず鞄から携帯を取り出してそれを眺めたけれど、やっぱり翔梧さんに頼るのはよそうと、それを鞄に放り込んだ。


約束の10分前に玄関に向かうと、あの営業マンが来ていて顔をしかめた。


「なんでズボンなんて……」

「いけませんか?」


私のギリギリの意地。
女という武器は、できるだけ隠したい。


「たく、わかんないやつだ」


不機嫌になったその人は、盛大なため息をついて、ドアの外を眺めた。


しばらくすると、見覚えのある顔がやってくる。
森さんだ。


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