私を壊して そしてキスして
「今日はニコニコ笑ってればいい。多少のことは我慢しろ。行くぞ?」
「――はい」
多少のこと……。
それが何を意味するのか、私だってわからないわけがない。
ギュッと鞄を握りしめて一歩を踏み出すと、ニコニコ顔の森さんも中までやってきた。
「おぉ、菜那ちゃん。今日はうれしいよ」
真っ直ぐに私の方に向かってきた彼が、嫌でたまらない。
「よろしくお願いします」
できるだけ冷静に、笑顔も封印してそういったけれど、森さんには何も伝わらなかったらしい。
「今日は何時までOKなんだ? 朝までどう?」
「いえ。私はお邪魔ですから、すぐにおいとまします」
「何言ってるの。まぁ、とりあえず行こうか」
彼が私の手を取りそうなのを、ギリギリのところでさりげなく回避して、仕方なく一歩を踏み出した。