私を壊して そしてキスして
「キャッ」
突然私と森さんの間に、大きな背中が立ちふさがる。
「失礼しますよ」
「えっ……どうして?」
慌ただしく駆け込んできたのは、翔梧さん?
「柳瀬君じゃないか。どうしてここに?」
森さんは彼を知っているようだ。
「少し用がありましてね。それより、何か?」
「いや……」
突然歯切れの悪くなった彼は、「失礼するよ」といって帰ろうとする。
「森さん流石ですね。
こちらにまでいらっしゃっているなんて、営業が行き届いていらっしゃる」
その人の後ろ姿に語りかけるように呟いた翔梧さん。
それは嫌味のようにも聞こえる。
「それでは、また」
ほんの少し後ろを向いて軽く会釈した森さんは、そそくさと帰っていった。