私を壊して そしてキスして
「あの森のオヤジは、結構悪名高くてね。
真面目に営業しないで金に物を言わせたり、女の子にちょっかい出したり。
菜那、あいつに会ったことないだろ?」
「はい」
「それはあいつのところには、絶対女の子を同行させなかったからなんだ。
来てよかったよ。まさかあいつに誘われていたなんてな」
彼のそんな言葉に膝が震える。
意地になって接待に行こうとした私は、まだまだ周りの見えない子供なんだ。
「そんな仕事しかないここに、菜那をおいておくわけにはいかない。
菜那がどんなに頑張っても、この会社はそんな仕事しかやらせるつもりはないようだ」
最初からそのつもりだったんだ。
あのあっさりした面接も、仕事ができるとかどうかなんて全く関係なかったんだ。