私を壊して そしてキスして
「翔梧さん、それで走って?」
ここに駆け込んできたとき、彼の息が上がっていたのを思い出した。
「あぁ、菜那に傷がついたら困る」
彼の優しい笑顔に、緊張がみるみる緩んでいく。
「はぁ……」
思わず出てしまったため息。
全身の力が抜けていくようだ。
「菜那、お前が自分の力で立ちたいと思っていること、俺としてはとても素晴らしいことだと思う。
だけど、世の中には理不尽なこともある。その場合、どうするかだ。
このままここで踏ん張るという道もある。
だけどな、いくら理不尽だと叫んでもそれを受け入れてくれるとは限らない。
会社の体質を根底から覆すのは容易いことではない」
真剣な彼に、私は頷いた。