私を壊して そしてキスして
「愛希(あき)は、素直だね」
そんなことを言う彼の言葉も……。
あき?
その名前を聞いたとき、私は凍りついてしまった。
「誰かいる」
愛希の言葉にビクッとして逃げ出そうとしたけれど、簡単に彼に捕まってしまって。
「菜那……」
唖然と私を見下ろす彼に、唇を噛みしめるしかなかった。
「お姉……ちゃん」
そう、愛希は私の3つ下の妹。
「菜那、違うんだ、これは」
焦る彼も、それ以上言葉が続かない。
「お姉ちゃん。靖司さんは私に頂戴? 私、彼が好きなの」
悪びれることなくそう言った愛希に、目を見張る。
「何なの、あんた」
「好きになっちゃったんだから、仕方ないじゃない。靖司さんを私に頂戴」
「女」の顔つきで彼を見上げる妹を、この時、心の底から憎いと思った。