私を壊して そしてキスして

「まださほど働いていないのにもかかわらず辞めるということに、罪悪感を感じるだろ?」

「えっ……えぇ」


彼の言うとおり、自分で決めたことを短期間で覆すことに抵抗がある。
自分なりに覚悟して決めたことだったから。


「それなら、俺が決める。ここは辞めろ」


「翔梧さん?」


「いや、辞めてくれ。

傷つくかもしれないとわかっていて、それでもその道を突き進むことは、体も心も健康でないとできないことだ。
今の菜那にできることではない。

ある意味、逃げなのかもしれない。
だけど、どうしようもないときは逃げればいいと俺は思う。
菜那が壊れてしまうくらいなら」


強い口調だけど、その言葉には優しさを感じる。



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