私を壊して そしてキスして

「私に、価値が?」

「当たり前だ。
仕事だってたくさんのスキルを持っている。
何級だとかつく資格だけじゃない。
接客だって上手いし、電話対応も、資料作りもよくできていたじゃないか。

それに、人としても魅力的だ。
お前の笑顔はいつもみんなを元気にした。
だから惚れたんだぞ?」


彼の言葉に涙がこぼれる。


「ここで身を引くというのも一つの正しい決断だと俺は思う。
それが菜那の未来につながる。
立ち上がれないほど傷ついた後では、もう遅い」


靖司とのことで、私はズタズタになってしまった。
そして、いまだその傷が完全に癒えたとは言い難い。
翔梧さんという最高のサポーターがいるのにもかかわらずだ。

そんなふうに苦しみ続けるのなら、乗り越えられない困難を避けるというのも一つの道なのかもしれない。



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