私を壊して そしてキスして

逃げることはずるいと思ってきた。

だから、それでいいといってくれる翔梧さんに驚いた。
壊れるよりその方がいいという彼に。


「人には適材適所があるんだ。
それをうまく選べなければ苦しい。
だけど、それを見つけられたら、きっと幸せに暮らせる。

俺にもそんなことがあってな。
ずっと合わない場所で生きていかなくてはと思い込んで、辛かった時期がある。
でも、したいことをしている今は、とても幸せだ。

もちろん、全部の困難を避けるのでは成長しない。
超えるべき山かどうか、その判断が重要だということだ」



彼の諭すような言葉は、私の心の奥の方までスーッと入ってくる。

きっと、私が知らないたくさんの経験を積んで、挫折と成功を繰り返して、今の彼があるんだ。



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