私を壊して そしてキスして

私はそのまま人事部まで走った。

はぁはぁ上がる息をドアの前で整えて、深呼吸をする。

何を言われても、もう決心は揺らがない。
彼がいてくれるから。


たくさんのデスクの横を何も言わずにすり抜けて行っても、私に視線をよこす人すらいない。
ここでの私は、そんな存在なのだ。


面接をしたあの部長のデスクに行って「辞めます」と申し出ると、かなり引き留められて驚いた。
二つ返事だと思ったからだ。



「まだ1週間だろ? もう辞めるなんて、早すぎるよ。
君、本気で働く気あるのかい?」

「もちろんあります。だから、辞めるんです。
私は接待をしにここに来たわけじゃありません。
それに、色仕掛けで契約をとるなんて、最低です」


こんなにはっきりとものが言えたのは、きっと翔梧さんのおかげ。



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