私を壊して そしてキスして
「みんなが辞めるのは当然です。
私だってイヤでした。
好きでもないオヤジに酒を注いで触られて……それも、何度も何度も。
挙句の果てにはホテルにまで誘われて。
それが会社のためになるのならなんて、正義感に燃えていたときもありました。
私も何か役に立っているんだって、バカな勘違いすらして。
だけど、何一つこの会社の財産にはなっていないじゃないですか。
その担当が外れれば関係も清算されて取引が切られる。
それの繰り返しでしたよね。
私は今さら後悔しても遅いですけど、このお嬢さんは違います。
こんなにはっきり物の言える人なら、そんなことしなくても立派にやっていけるはずです」
ハッとしてまだ名前も知らないその人の顔を見ると、柔らかい笑顔を私に向ける。