私を壊して そしてキスして
「ねぇねぇ、旦那さんの事なんて呼んでるのよ?」
「えっ、まぁ……その……」
「アレ、上手いの?」
ちょっと酒癖の悪い3つ上の先輩、恵美さんが私に絡んでくる。
こんなこといつもの事だけど、今日はちょっと辛い。
「ほら、香坂困ってるから」
そこに割って入ってくれたのが、係長の柳瀬(やなせ)さんだった。
「なによ、柳瀬さんだって、菜那(なな)がいなくなるの寂しいくせに」
「あぁ、寂しいよ」
「えっ?」
ビールが半分くらい入ったコップを軽く持って口にしながら、真顔でそんなことを言った柳瀬さんに驚いてしまった。