私を壊して そしてキスして
あの女性のことを話すと、「たくましい人だな」と目を細める。
「翔梧さん、ありがとうございました」
仕事の途中なのに、こうして彼が来てくれたから大きな一歩があったのだ。
「菜那が自分で頑張ったじゃないか。
それに菜那がこんな事態に、仕事なんて手につかないしな」
そう言って笑う彼は、コーヒーを飲み干した。
「さてと、サボっちまったから今日はちょっと遅くなる。
なんかうまいもんでも食いたいな」
「分かりました」
彼の仕事がどれだけ忙しいのか、よくわかっている。
だから彼に無理をさせてしまったことも。
だけど、素直に甘えて、ありがとうと言おう。
「誰かに頼ることは恥じることではない」
それは彼が教えてくれた大切な財産だ。