私を壊して そしてキスして
俺のもの
仕事は振り出しに戻ってしまった。
それでもあまり落胆はしていない自分に気がつく。
イヤな経験ではあった。
だけど、無駄な経験ではなかった気がする。
今回のことは、私が就職を焦るばかりに、じっくり会社を選ばなかったのも悪い。
翔梧さんや、あの女性がいてくれなければ、きっと大きな後悔をすることになっていたはずだ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
私がエプロンをしたまま玄関で出迎えると、「新婚みたいだ」なんて勝手に照れている彼が、ちょっと可愛らしく思える。
私の顔をじっと見つめた彼は、ふっと笑って寝室へ着替えに行く。
彼がそばにいてくれるだけで、こんなに穏やかな時間を持つことができて、そして私は強くなれる。
彼の影響の大きさを改めて感じた。