私を壊して そしてキスして

テーブルに並べたのは、母直伝の豚の角煮。
油もしっかり抜いて、食べやすいはずだ。

翔梧さんの好きななすを煮びたしにして、大根のお味噌汁と、レンコンのきんぴら。


「あ、なんだか彩が……」


テーブルに並べてみると、華がない。
栄養のバランスは考えたつもりだったけれど、なんとなく失敗した気がした。


「いいんだよ。すごく美味そうだ」


そういいながら、ごはんをよそっている間に、レンコンをつまみ食いしている。


「翔梧さん!」

「美味いよ、これ。懐かしい味がする」


そういってもらえると、作った甲斐があったというものだ。


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