私を壊して そしてキスして

私の仕事なんて、彼に比べたらホントに些細なことしかできなかっただろう。
けれど、それでも一生懸命だったから、そんな風に言ってもらえると何だかうれしい。


「あー、ほんとは最終手段にとっておこうと思ったんだけど」

「えっ?」

「社長をしている平井っていう俺のツレが、菜那をどうしてもよこせって言うんでな」

「私?」

「元優秀な部下が、仕事を探してるなんてこぼしたら、すぐに飛びついてきた。
でも、あいつのところっていうのが気に入らない」



優秀な部下……。

それはきっと彼の優しい嘘に違いない。
ドジばかりして、いつも助けてくれたのは翔梧さんで、それ故、成功に導かれたことも数知れない。

だけど、いつも全力でぶつかってきたことだけは、胸を張って言える。


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