私を壊して そしてキスして

「私……やってみたいです」


どこまでできるのか分からない。
迷惑もかけるかもしれない。

けれど、やってみたい。


「分かった。
ただし、絶対に無理はしないこと。体が一番大切だと忘れないこと。それが条件だ。

明日、仕事が終わった後、平井に会いに行こう。
だけど、それまでは、ゆっくり休んでおけ。少し顔色が悪いぞ」

「――はい」


彼が私の頬に手を伸ばして包み込む。

「菜那なら大丈夫」という彼のメッセージが伝わってくるようで、安心する。

この人の温もりがあれば私は……きっと、大丈夫。



翔梧さんが、こんなにも考えていてくれているんだって、うれしくてたまらない。

転職に一度失敗してしまって、臆病にもなってしまったけれど、せっかく巡ってきたチャンスにはチャレンジしてみたい。


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