私を壊して そしてキスして
彼に連れられて、大きなビルの前に立つ。
久しぶりに着たスーツが、私の気持ちを引き締める。
何度も何度も持ち物をチェックして、髪形を整えている姿を彼に見られて、笑われてしまったけれど。
そのビルのエントランスは、人で溢れていた。
なんでもここは、たくさんの会社の集まったビルなそうで、一つ丸ごと自社ビルだった前の会社とはやはり規模が違う。
だけどその活気は、少しも変わらないように思える。
彼は何度も来ているのか、階数ごとに分かれているエレベーターホールで、迷うことなくボタンを押して、それを待つ。
少し緊張していた私は、彼の後姿をじっと眺めて、気持ちを落ち着かせようと努力してみた。