私を壊して そしてキスして

本当は緊張のあまり、昨晩はろくに眠れず。

というのも、翔梧さんの顔に泥を塗ってはいけないと、過剰に気持ちを張りつめたせいだ。


眠れず身動ぎする私に気が付いた彼は、「心配いらない。菜那ならできる」と魔法の言葉をかけてくれて、やっと深夜になってから眠りにつけたのだ。


いつもは鳴るはずの目覚まし時計が切られていたのは、私を寝かせておこうという配慮だったのかもしれない。

ようやく目覚めた時には、もう彼は出勤していた。
朝食の準備さえしなかった……。


すぐにテーブルの上のメモに気が付く。


“おはよう。菜那は菜那のままでいい。自信を持って”


そんな彼のメッセージは深く心に刻まれた。


< 213 / 372 >

この作品をシェア

pagetop