私を壊して そしてキスして
新しい場所
次の日から、彼と一緒に家を出ることになった。
それが何だか新鮮で、くすぐったい。
「菜那のスーツ姿、やっぱりいいな」
真顔でそう言う彼に、照れてしまう。
「行ってらっしゃい」
地下鉄の駅のホームで、反対方向に向かう私たち。
「おう、菜那も。何かあったらすぐに電話しろ」
「うふふ、大丈夫ですよ?」
「いや、ダメだ。平井じゃ信用できない」
私の頭に手を乗せた彼は、丁度来た電車に私を乗せた。
笑顔で手をあげる彼に、私も思わず小さく手を振る。
初めての出社が、不安でなかったわけじゃない。
だけど、平井さんという彼の親友がいて、いつも翔梧さんが近くにいる気がして、その不安も期待に代わる。