私を壊して そしてキスして
「なーんだ。もう人のものなんだ。
ストライクだったのにな」
さっき、声をかけてくれた人が、そんな風に言う。
たしか、橋本って呼ばれてたっけ。
彼の頭を書類でバシッと叩いたのは上田さん。
「橋本、あんたはそんなことばっかり言ってるから、仕事ができないのよ。
香坂さん、よろしくね」
堅苦しさなど微塵もなくて、活気あふれる職場に驚く。
「これ、お願いできるかしら?」
さっき助け船を出してくれた上田さんは、ここのチーフだった。
初めて来たときに、入社手続きをしてくれた人なのに、営業部隊のチーフだなんて、とても驚く。