私を壊して そしてキスして

パソコンへの入力を任せられた私は、久しぶりに、キーボードを叩く。
カチャカチャ音を立てるそれが、心地よいリズムを刻む。

こうしていると、翔梧さんの言った通り、余計なことを考えなくて済んだ。


「できました。次は……」

「えーっ!」


私がチーフの上田さんに書類を差し出すと、橋本さんが声を上げる。


「菜那ちゃん、もう、できたの?」

「橋本とは違うの。もう、あんたは営業に行きなさいよ」

「へーい」

「アイツ、営業はできるんだけど、いまどき珍しいアナログ人間なのよね」



そう言いながら、私の提出した書類に目を通して何度も頷く。


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