私を壊して そしてキスして
ふと電話が震えて、慌てて鞄からそれを取り出すと、翔梧さんからだった。
「菜那、ちゃんと帰してもらったか?」
「はい。とても楽しかったです」
「うーん」
「翔梧さん?」
「――なんか、妬ける」
「えっ?」
「俺の知らない菜那がいるのが」
私はその言葉に微笑んだ。
今日は、彼の大好きなハンバーグを作ろう。
あんなに大人な彼が、意外と子供のような食べ物が好きだというのは、私だけの秘密だ。
たった一日、勤務しただけで、こんなに心が高揚している。
それはきっと、今までの自分に区切りをつけられたからなのかもしれない。