私を壊して そしてキスして
いつもより早めに帰ってきた彼は、きっと心配していてくれたに違いない。
「菜那、ただいま」
少し息を切らせて、私の顔を覗き込む。
「おかえりなさい」
こんな会話がなんだかくすぐったい。
彼と一緒にハンバーグを頬張りながら、会話を交わす。
「平井に何かされなかったか?」
第一声がそれで笑ってしまう。
「されませんよ。皆、いい人でした」
「よかった。菜那の顔が生き生きしてきた。
迷ったけど、行かせてよかったな」
翔梧さんの言うとおり、行ってよかったとそう思う。
あのまま――靖司と愛希の事を引きずったまま、毎日を過ごしていたら、きっとダメな人間になってしまっただろう。