私を壊して そしてキスして

「菜那、俺……不安だ」

「不安?」


ゆっくり離れていった彼が私を見下ろしながら、そんな言葉を漏らす。


「自分で会社を紹介しておいて……だけど、本当はお前をどこにも出したくない。
ずっと縛り付けておきたい」


そう言いながら、もう一度触れるだけのキスを落とす。


「菜那が、俺の知らない笑顔をどこかで誰かに向けているのかと思うと、嫉妬する。って、まるでガキだな」



あんなに大人な彼が、そんなことを言うなんて。

だけど、それがとっても嬉しくて、私だけを求めてくれる彼が愛おしいと思う。


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