私を壊して そしてキスして
携帯を取り出して、何度もその名前を表示しする。
そしてボタンに手をかけたけれど、どうしても押すことができなくて、その前にある小さな公園のベンチに腰掛けた。
もう薄暗くなってきて、少し寒い。
暗闇は不安を募らせる効果があるのだと、そう思う。
握り締めていた携帯が震えた時、それに驚いてビクッと震える。
そして、慌ててそのボタンを押した瞬間、私の手から滑り落ちてしまった。
「菜那、どうした?」
慌てて拾い上げて耳にあてると、少し焦ったような彼の声。
「ごめんなさい、落としちゃった」
「あはは、おっちょこちょいだな」
彼の声を聞くだけで、こんなに安心するのは何故だろう。