私を壊して そしてキスして
「えっ?」
「後ろ……」
ピタッと止まった彼が、振り向いて私を捉える。
電話を切って、ネクタイを緩めるのが見えて……駆け寄ってきた彼は、そのまま私を抱き寄せる。
「菜那……」
「翔梧さん、こんなところじゃ……」
会社の近くじゃ、誰かに見られてしまうかもしれない。
ドクドクと激しい彼の鼓動が、彼の優しさを示している気がして――大粒の涙がこぼれてしまう。
「そんなこと、気にしなくていい」
そう言って、強く抱き寄せてくれた彼に、私はまたもたれ掛ってしまった。