私を壊して そしてキスして

「柳瀬さん、彼女いるんだ」


ぽつりとそう漏らした上田さん。


「あの人、全然そういう事に興味なさそうでしたよね。
仕事の鬼っていう感じで」


それに続く橋本さん。
そして、周りの皆も、首を傾げる。


「あはは、あいつも男だからね。
ずっと狙ってた子を、やっと手に入れたらしいから。
ああ見えても、一途なのさ」


私の顔をチラッと見てそう言う平井さんは、きっとすべてを知っているんだと思った。


ずっと――。

翔梧さんもそんな風に言っていたけれど、本当だったんだ。
そして、それに少しも気がつかなかった私。



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