私を壊して そしてキスして
その日、家に帰ってきた翔梧さんは、私の顔を見て微笑みながら頭に手を置いた。
「ただいま」
「おかえりなさい。あのっ……」
「驚かせて悪かったな」
私は小さく頷いた。
私の作った煮物に、何度も箸を運びながら、「美味い」と言ってくれる彼。
「あのっ、翔梧さん、会社……」
彼氏はもしかしたら私のために転職を早めたんじゃないかって、そんなことが気になっていたから、思わず口を開いた。
「あぁ。前に話した通り、もともとあそこは、平井と俺が立ち上げた会社だ。
俺も武者修行をして戻るという約束で、しばらく出してもらったんだ。
だけど、戻りたくない理由があってな。
でも最近それが無くなったから、戻ることにした」