私を壊して そしてキスして

「菜那、何があったんだ? どうして、幸せじゃないんだ」


彼が私を抱き寄せて、私の髪に指を入れながらそう聞く。


「ダメに、なったんです」

「彼氏とか?」

「――はい」


そう言った瞬間、もう一度強く抱き寄せられて、彼の少し速い鼓動までが耳に響いてくる。


「辛かったな。お前一人で抱えていたんだな。
気付いてやれなくて、悪かった」


気付いてやれなくてなんて……。
そんなの当たり前だ。


彼にそんな風に言われて、私の頭の中をあの日からの事が駆け巡る。


今でも、彼と愛希が会っているのかは分からない。
それでも、そんな光景が頭から離れない。



< 28 / 372 >

この作品をシェア

pagetop