私を壊して そしてキスして

その日、彼に誘われて、少しお洒落なレストランに来ていた。

仕事が忙しくなってきた私を気遣って、時々外食に出るようになったのだけれど、彼と待ち合わせしたそこは、今までとは違う雰囲気。


お店の人に椅子を引いてもらって座るのは、少し緊張した。

少し背伸びをして、黒いワンピースなんて着てみた私。
場違いでなければいいのだけれど……。


「翔梧さん、お疲れ様でした」


グラスに注がれた赤ワインで乾杯する。


「ありがとう。これから、よろしくな。
今日はまた、いい女だな」

「そんな……」


彼にそんなことを言われて思わず俯くと、「よく似合ってる」なんて褒めてくれるからドキドキしてしまう。


< 281 / 372 >

この作品をシェア

pagetop