私を壊して そしてキスして

靖司と婚約中にダメになってしまったことを気遣ってくれたのか、彼はすぐに私の両親のところへ挨拶に行ってくれる。


彼が、私を連れ去った挙句、こうなったことを詫びると、母が首を振る。


「あのままでは、菜那はつぶれてしまったでしょう。
とても感謝しています。
私たちは、娘を信じてやれませんでした。
菜那、いい人に出会えてよかったね」


そう涙を流す母。
あの時、彼との同棲を強く反対した父も、今は穏やかで。


「柳瀬さん、菜那をお願いします」

「いえ、こちらこそ」


お茶を運んできてくれた愛希は、とびきりの笑顔。


「お兄さん。お姉ちゃんをよろしくお願いします」

「お兄さんだなんて、照れるな」


笑い声が広がる。



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