私を壊して そしてキスして

そのまま家を出ようとしたとき、愛希が駆け寄ってきた。


「お姉ちゃん」

「ん?」

「幸せになってね」

「うん。ありがとう」

「靖司さんがね……」

「えっ?」


突然飛び出した靖司の名に、ひどく驚く。


「謝ってくれたの――」


愛希がニッコリ笑ってそう言ったとき、翔梧さんもまた、笑っていた。


「これで私……前に進める」

「――うん」

「お兄さんよりいい男、捉まえるから」


靖司も、私たちの痛みを理解してくれたのだと分かって、少し安心した。

結果的に、私たち姉妹は彼から離れることになったけれど、彼の幸せもまた、願いたい気持ちになった。


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