私を壊して そしてキスして

立派な門をくぐるのだけで緊張する。

だけど、彼はそんなことはおかまいなしで、私の手をぐいぐい引っ張る。


「大丈夫だって」

「だって……」


そうは言われても、強張ってしまう顔。

門から玄関までが遠くて驚く。
そして、その間の庭も手入れが行き届いていて、思わずキョロキョロしてしまう。


「翔梧、来たのか」

「はい」


突然大きな庭の奥から、彼に似た紳士が現れた。


「親父」


彼がにっこり笑って私に紹介してくれたのは、お父様……。


「えっ、あっ。初めまして、香坂です」


慌てて頭を下げると、翔梧さんと同じように優しい笑顔で笑ってくれて安心した。




< 292 / 372 >

この作品をシェア

pagetop