私を壊して そしてキスして
「本当の事じゃない。
何度縁談を勧めても、好きな人がいるからしないって言って。
じゃあ連れてきなさいと言うと、彼女じゃないってね。
全く自分の息子ながら、情けなくて」
お母様の言葉に驚きすぎて思わず彼を見上げると、困った顔をして溜息をつく。
「だけど、ちょっと見直したわ。こうして菜那さんを連れてきたんだから」
再び翔梧さんの方へと視線を移すと、彼はバツの悪い顔をしている。
それとは対照的に、してやったりのお母様が少しおかしい。
「いらっしゃい」
それから顔を出したのは、さっき庭で挨拶をしたお父様。
慌てて頭を下げると、お母様と同じように笑う。
「緊張するなという方が無理でしょうが、リラックスしてください。
翔梧と一緒になってくれるなんて、こちらが頭を下げなくては」
「いえっ、そんな……」