私を壊して そしてキスして

「帰らなくていい」

「えっ?」

「こんなに壊れて……そんな風になってまで、我慢することなんてない。
俺が何とかしてやる」


そんなこと……そんなことできない。

フラれて傷ついて、酔った挙句に転がり込んだ私。
彼にそこまでしてもらう義理なんて、ない。


「言っただろ。俺はずっと菜那が好きだった――。

どんなにドジを踏んでも、懸命に挽回しようとするのを見て、可愛い奴だと思ってた。
いつも一緒にいるうちに、ずっとこうしていられたらって。

だけど、お前に結婚を考えているヤツがいるって聞いて、ひどく落ち込んで。
それでも、奪ってやりたいと思ったけど、お前があんまり幸せそうだったから……。

だけど、もう我慢できない」



彼は私を真剣な眼差しで見つめながら、強い口調でそういった。



< 30 / 372 >

この作品をシェア

pagetop