私を壊して そしてキスして

ほんのわずかな時間だったけれど、それは私にとっても大切な時間だった。

彼がどれだけ、私の事を想っていてくれたのか、本当の意味で分かったから。

きっと私は、幸せになれる。


その後、お母様が「派手すぎてもう着れないから」と言って、素敵な着物までくださるという。
その上、着付けまでしてもらった。


「えっ? 菜那……」

「どお? 菜那さん、綺麗でしょ」


薄い桜色のその着物をお母様の手で纏った私は、翔梧さんのいる部屋へと戻ると、彼が驚いて目を見開いている。

お母様が自慢げな笑みを浮かべてくれるのが、くすぐったいけれどうれしい。



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