私を壊して そしてキスして

「初めは、ちょっとした反発心で始めた会社だった。
平井と一緒に自分の力を試したくて。
家元の息子っていうレッテルがすごくイヤだったんだ。

だけど、いつの間にか夢中になってた。
菜那を追いかけるのと同じように。

もしもダメでも、今、これをしなきゃ後悔するって思った。

雇われる者の立場とか社会の裏表。知っておかなければいけないことを今の会社に学びに来たつもりだった。
でも、想像以上にのめり込んで、そっちも面白くなっちまったけどな。

それも菜那のおかげ」

「私の?」

「菜那がいなかったら、俺、こんなに突っ走れなかっただろうな。
菜那にいいとこ見せたかったのさ」


あははと笑う彼。

だけど私の心は、ドンドン満たされていく。


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