私を壊して そしてキスして
その晩、彼は真剣な顔つきをして、私にそれを差し出した。
「えっ?」
「新婚旅行は、ちゃんと平井に時間をもらうから」
それを見た時、思わず涙がこぼれた。
それは、もう彼の名が記された婚姻届。
靖司とはたどり着けなかったゴールに、本当にたどり着いたんだ。
彼に渡されたペンで名前を書こうとしても、震えてしまって書くことができない。
「あはは、まさかの拒否か?」
「もう! 驚かせる翔梧さんが悪いよ」
結局、なかなか涙が止まらない私を彼が優しく抱き寄せてくれて、やっと震えが治まった。
それを書き上げた時、彼がくれたキスを忘れないだろう。
「これで、逃げられないぞ?」
「翔梧さんだって」