私を壊して そしてキスして

時折漏れてしまうため息に反応するように、彼の舌が全身を這う。

やがて一つにつながったとき、幸せの涙を流す私に、彼も切なげな顔をして――。


「あっ! ……あぁっ」


突然深く私をついた彼にしがみついて声をあげる。


「壊したい。菜那を」

「壊して。私をあなたのものに……」


靖司に裏切られたとき、彼に粉々に壊して欲しいと願った。
けれど、彼はそうはしてくれなかった。


けれど今、彼にそうされたい。
今までの私を粉々にして、あなた色に染められたい。



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