私を壊して そしてキスして

「菜那、おまえはとりあえず眠れ。少しでいい、体を元に戻すんだ」


ずっと睡眠薬なしでは眠ることさえできなかったことも、何かを少し口にするだけで、吐き気を催すことも、まるでわかっていたかのように、私を包み込んでくれる。



元々、仕事の面ではとても厳しい人だったけれど、厳しさの裏には愛のある人だった。

対外的にミスをしてしまったときは、必ず彼が一緒に頭を下げてくれたし、成功した時にはきちんと褒めてくれる人だった。

彼のことを慕う部下が多かったのは、きっとそのせいだ。


鋭い観察眼と、何もかも包み込むよう包容力は、きっと仕事の面でも出ていたんだ。



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