私を壊して そしてキスして
タバコに手を伸ばした平井さんの手を、翔梧さんが止める。
「あぁ、悪い。癖でな」
「上田は嫌がらないのか?」
「アイツも嫌なのかなぁ」
その時、橋本さんの予感が正しかったことを知った。
「俺たちもするかな」
「いいんじゃない? かなり幸せだぞ?」
堂々と惚気る翔梧さんに、こっちが恥ずかしくなってしまった。
上田さんと同行した時、私は結婚を報告した。
ずっと心配していてくれた彼女は、それは喜んでくれて。
「よかったわね。
菜那ちゃん、最近生き生きしてるもの。
だけどね、男は裏で女が操る方がきっと上手くいくわよ?」
「ふふ、上田さんも操っているんですか?」
「当たり前よ」
こんな風に笑いあえる時間が楽しい。
けれど、一歩営業先に入るとキリリと顔の変る彼女に、すこしでも近づきたいとそう思った。