私を壊して そしてキスして
彼が程良い力で私を抱き寄せながら、背中をとんとんたたいてくれる。
そのリズムと彼の温もりが、凍った心を少しずつ溶かしていって――。
こんなに穏やかな気持ちになれたのは、あれ以来だ。
肩の力が抜けていくのが自分でもわかる。
ずっとずっと苦しかった。
何も悪いことなんてしてないのに、自分が悪かったような錯覚さえ覚えて――。
私の魅力がないから彼は……なんて考えたことすらあった。
そして、愛希の持っているかわいらしさが私には少しもないからだと……。
そんな呪縛から一時でも抜けださせてくれた彼は、まるで魔法使いのようだ。
そして私は、いつの間にか、深い眠りに落ちていった。