私を壊して そしてキスして

ギギギ

さっき入れたエアコンがようやく運転を始めた頃、私は彼の指の繰り出す刺激に耐えかねて、思わず彼にしがみついた。


「んんん……」


彼は私より何倍も呑んだのに、もうすっかり素面に見える。


「いやっ……あっ、あぁ……」


もう腰が砕けそうになったとき、ふわっと体が宙に浮いて、ベッドに押し倒された。


「上田がな」

「えっ?」

「菜那のスイッチ入れといたとさ」

「はっ?」

「嫉妬、しただろ。昔の女に」


冗談のような言い方だけれど、彼の顔が真剣だ。

嫉妬……した。
私の知らない翔梧さんを知っている女(ひと)がいるのだから。

そして、彼がこうやって抱きしめた女が……。


< 342 / 372 >

この作品をシェア

pagetop